ハイパーカジュアルゲームの王道ジャンルと言えば、ランナーゲーム。キャラクターがゴールまでコースを走り抜けることを目的としたゲームジャンルです。そのシンプルさと得られる達成感から、年代や国籍を問わず多くの人から親しまれています。
そんなランナーゲームを開発する場合、どのようなメカニクスを使用するといいのでしょうか?今回は、ランナーゲームの人気の理由を探り、そのトレンドを分析します。これまでに流行ったトレンドを参考に、あなた独自のランナーゲームを作るヒントにしてみてくださいね。
ランナーゲームの人気の理由
ランナーゲームは常にジャンル別のダウンロード数の1位2位を競う安定した人気を誇っています。その人気の理由を探り、ランナーゲームの強みをゲームデザインに活かせるようにしましょう。
ゲームを進めている感覚がある
ランナーゲームでは物理的にキャラクターが「前に進んでいる」ため、ゲームを進めている感覚を得やすいという特徴があります。
ハイパーカジュアルゲームでは、短時間でユーザーに達成感や爽快感を与えることが重要です。リテンション率を高め、収益を上げるためには、レベル構成や難易度を適切に設定してユーザーが「またプレイしたい」と思える仕組みにする必要があります。ランナーゲームは、ハイパーカジュアルゲームにとって重要な点をしっかりと押さえているのです。
ゲームの目的が分かりやすい
ランナーゲームの目的は、ゴールまで走り、コースを終わらせることですよね。5歳の子どもでも理解できるような明解なゲームの目的があることで、ターゲットとなるユーザー層が広がります。
チュートリアルもシンプルで短くてOK。ユーザーはインストール直後から楽しんでプレイできるため、ユーザー体験の向上につながるのです。
アレンジを加えやすい
ランナーゲームはアレンジを加えやすいという特徴もあります。ゴールまで走るという目的がとてもシンプルなため、キャラクターを変えたり障害物を変えたりすることなどで個性を出しやすいのです。
また、ランナーゲームが好きなユーザーは、様々なアレンジが加わった複数のランナーゲームをプレイする傾向にあります。一つのアプリに留まらない流動的なユーザーが多いので、新しくリリースされたアプリもインストールされやすいのです。
ランナーゲームのトレンドの変遷
そんなランナーゲームは、既に10年以上トップチャートにあり続けるという大人気ぶり。ここ数年ではハイパーカジュアルゲーム市場が活発化し、以下のような様々なトレンドが表れました。
ioランナー
初期のランナーゲームでは、競争相手がおらず、プレイヤーが一人でコースを走ることがほとんどでした。しかし2019年ごろには「ioゲーム」というトレンドが流行っています。
ユーザーを他の架空のプレーヤーと戦わせることで、ゲームをより競争的なものにし、レベルを通過することに対してより満足感を得られるようにしました。
引用:Supersonic
一人でゲームをするのも良いですが、他のユーザーと一緒にプレイすると楽しさが倍増しますよね。対戦相手のプレイヤーが架空でも、社会的/ソーシャルな要素が追加されることでプレイヤーの満足感を向上させることができるのです。
群衆メカニクス
群衆メカニクスでは、プレイヤーが操作する対象は一人のキャラクターではなく「群衆」です。「一人のキャラクターを操作する」というランナーゲームの基本と思われていた部分を覆すことで、ゲームプレイにダイナミックさを追加することができています。
例えばJoin Clashは、ユーザーがレベルを通じて走りながらキャラクターを集める群衆メカニクスを使用していました。このゲームは大成功を収め、発売後も勢いを増し、2021年第1四半期には世界で最もダウンロードされたゲームとなったのです。
引用:Supersonic
乗数メカニクス
乗数メカニクスとは、コース上に設置されたゲートを通ると、大幅にポイントを獲得できる仕組みのトレンドです。数やポイントの変動が分かりやすい群衆メカニクスと併用されることが多いでしょう。
群衆メカニクスのランナーゲームでは、画面上のキャラクターが1人ずつではなく指数関数的に増えると、ゲームプレイの満足感が上がるのです。
引用:Supersonic
群衆メカニクスと乗数メカニクスの両方を採用しているハイパーカジュアルゲームで有名なものは「Count Masters」です。例えば、群衆の人数が20人で、「+10」のゲートと「×10」のゲートがある場合、「+10」のゲートを選べば群衆は「30人」に、「×10」のゲートを選べば「200人」になるという仕組み。一気にゲームを進めた感覚を得ることができ、満足感につながります。また、咄嗟の判断力も必要となりますので、ユーザーのエンゲージメントを高めることにもつながるでしょう。
女性向けランナー
女性向けのランナーゲームもトレンドになっています。コースを進むにつれてハイヒールが高くなったり、髪の毛が長くなったりなど、女性のキャラクターやファッションのテーマをメインにしているのです。
ハイパーカジュアルゲームのユーザーの約半数は女性なので、女性にターゲットを定めてゲームを制作するとインストール数を獲得しやすいでしょう。ペルソナをはっきりと設定してゲームを考案してみると、独創的なテーマを思いつくかもしれません。
例えば「Twerk Race 3D」は女性向けで、トゥワークというお尻のダンスをマスターすることを目的にした、少し変わったテーマのランナーゲームです。 レース中にブロッコリーを食べればスリムになり、ハンバーガーを食べれば筋肉が育ちます。女性キャラクターのお尻の筋肉を成長させ、最後に別の女性とダンスバトルをするというアイデアは独創的ですよね。女性向けのテーマと、ユーモラスなテーマをかけ合わせたランナーゲームだと言えます。
物語的ランナー
物語的ランナーは、コースを進むと同時に物語を進めることを目的としています。
そして、物語的ランナーの台頭です。このゲームは、キャラクターを主役に据えたゲームで、ユーザーはレベルを進めていき、ゲームプレイ中に物語を進めるための決断を下します。
引用:Supersonic
例えば「Run of Life」では、コース上でプレイヤーが選ぶアイテムによって主人公の年齢が変わります。「ジム」や「睡眠」など、キャラクターを若返らせるようなアイテムを選ぶと年齢が下がっていきますが、反対に「Netflix」や「パーティーに行く」などを選ぶとキャラクターが老いてしまいます。あまりキャラクターが老いすぎると、ゲームオーバー。
物語的ランナーでは、正しく物語を進めるために頭脳を使うパズルのような要素も追加されています。また、これまでにないテーマを使用しやすく新鮮さがあるトレンドだと言えるでしょう。
ランナーゲームはいつまでも愛されるジャンル
ランナーゲームはいつまでも愛されるジャンルだと言われています。トレンドに移り変わりはありますが、ランナーゲームの「ゲームを進めている感覚」や「分かりやすさ」「達成感」などの強みはどんなトレンドでも活かせるでしょう。
ハイパーカジュアルゲームにおいては、人気の揺れが激しいジャンルにチャレンジする場合、開発のスピードが重要となります。開発のスピードに自信があまりない方は、時代を問わず人気なランナーゲームに挑戦してみるといいかもしれません。