インストールが無料であるハイパーカジュアルゲームは、ユーザーに遊び続けてもらえないと収益を上げることができません。そのため、デベロッパーやパブリッシャーにとってリテンション率を上げることは大きな課題となります。
そこで今回は、Supersonicのゲームデザイナーであるスレン・メルコニャンがその豊富な経験を活かして「リテンション率の上げ方」を解説した記事を紹介します。リテンション率を上げたいけれど何を変えればいいのか分からない方はぜひ参考にしてくださいね。
リテンション率はなぜ重要?
リテンション率とは「継続率」のこと。ハイパーカジュアルゲームをインストールしてからユーザーがプレイし続ける期間の長さを示す指標です。
リテンション率が低ければ、ユーザーがアプリをインストールしたあとすぐにプレイしなくなったことを意味します。反対にリテンション率が高ければ、アプリをインストールした後しばらくゲームをプレイし続けているユーザーが多いという意味です。
では、リテンション率はハイパーカジュアルゲームにおいてなぜ重要なのでしょうか。ハイパーカジュアルゲームの収益は主にアプリ内広告から発生しています。広告の再生回数や再生時間に応じて収益が確定するため、一人ひとりのユーザーがより長い期間ゲームをプレイすること=広告を再生すること、が重要となるのです。
ハイパーカジュアルゲームは無料でインストールできるため、インストール時点では収益が発生していません。そこからどれだけリテンション率を高め、LTVを上げられるかが勝負となるのです。
リテンション率は何に影響される?
そんなハイパーカジュアルゲームにとって重要な指標であるリテンション率は、何に影響されているのでしょうか。様々な要素が複雑に絡み合っていますが、ここでは2つ取り上げて解説します。
アプリ内広告の印象
アプリ内広告の印象によってリテンション率を下げてしまうことがあります。広告の量が多すぎたり、表示されるタイミングにストレスを感じられたりすると、ハイパーカジュアルゲーム自体に不快感を抱いてしまうのです。
アプリをアンインストールする理由の約40%が広告によるものだという調査もあります。一度広告に不快感を感じたユーザーは、競合のハイパーカジュアルゲームに移る可能性もありますが、最終的には広告が少ないSNSで暇つぶしをすることになってしまうでしょう。
収益源である広告を表示することは免れませんが、その表示方法や表示回数を工夫してユーザーの負担を最小限に留めることが大切です。広告に不快感を感じさせず、ハイパーカジュアルゲームの楽しさを強調できればリテンション率UPにつながります。
ゲームの面白さ
ハイパーカジュアルゲームのリテンション率は、そのゲームの「面白さ」と大きく連動していると言えます。
結局のところ、一度インストールしたゲームをプレイし続けるかどうかは、ゲームを面白いと感じるかどうかに掛かっていますよね。ユーザーがゲームにハマれば、飽きるまで長い期間ゲームに没頭してくれます。必然的にリテンション率は上がり、LTVも上がるでしょう。
Supersonic流・面白さの定義5つ
ストレス解消になるか、達成感を得られるのかなど、面白さには様々な種類があります。そんな中、Supersonicのスレン・メルコニャンは記事の中で、5つの面白さに注目しています。
①自由がある
「自由」を与えられると、ユーザーはそのゲームを面白いと感じるでしょう。Supersonicでは以下の実例を紹介しています。
「Bridge Race」では、ユーザーがどのようにして目的を達成するかの選択肢、そして自由を与えています。例えばユーザーは、敵を押したり、自分の橋を架けることに集中したり、敵の橋を破壊したりと、行動に自由があるのです。
引用:Supersonic
ハイパーカジュアルゲームは操作やゲームの目的がシンプルで分かりやすくあるべきです。そしてこれは、ユーザーから選択肢を奪うことと同義ではないのです。シンプルなゲームプレイでも、ユーザーに選択肢や行動の自由を与えることで、「面白い」と感じさせることができるでしょう。
②特別だと感じられる
「私は特別だ」とユーザーに感じさせることも「面白さ」を引き出す一つの方法です。優越感や無敵感と捉えてもいいでしょう。現実では得られないような権力を与えられると、ユーザーはゲームに面白さを感じやすいのです。
Supersonicでは「Bazooka Boy」の例を挙げて説明しています。
特別な武器で障害物を吹っ飛ばしていく「Bazooka Boy」はこの好例でしょう。Google Playストアの説明欄でも、ユーザーに現実では得ることができない特別な力を与えることでダウンロードを誘惑しています。「爆風のように進んでレベルを突破し、様々な素晴らしい武器ですべてのものを破壊しよう」と書いてあるのです。
引用:Supersonic
ハイパーカジュアルゲームは、短時間で爽快感や達成感を得られるゲームジャンルです。リテンション率を上げるために、ユーザーに特別なパワーを与えることで爽快感を感じさせる工夫をしてみてはいかがでしょうか。
③知識に自信がつく
「私には知識があるんだ」と感じさせることも、ゲームの面白さをUPする方法です。
達成感を感じたり何かを発見したりすることも、ユーザーが面白いと感じる一つの方法です。例えばハイパーカジュアルのパズルゲームでは、パズルを解いたときにユーザーは満足感を得られます。
引用:Supersonic
現実では仕事が上手くいかなかったり、人間関係で悩んでいたり。無意識に「自分は何も知らないんじゃないか」と感じてしまう場面も多いものです。そんなときにハイパーカジュアルゲーム内で知識を活用してどんどん課題を解決できると、ゲームに面白さを感じられるでしょう。
④誇りを感じられる
ゲーム内でユーザーに誇りを感じさせることも、ゲームを面白いと感じさせリテンション率を上げるひとつの方法となります。
ユーザーが誇りに思うような役割やキャラクターを演じさせることも、プレイ時間を伸ばすのに効果的です。利他的な要素が「ヒーローになりたい」というプレイヤーの心理に働きかけるのです。
引用:Supersonic
Supersonicの記事で書かれているように、ヒーローのようなキャラクターをユーザーに演じさせるとリテンション率UPの効果を期待できます。
あの有名なスーパーマリオでも、プレイヤーはピーチ姫を助けるという使命に駆られていますよね。子どものころ、ピーチ姫を助けることに必死になった思い出がある方も少なくないはずです。同じ作用を利用すれば、ハイパーカジュアルゲームのリテンション率UPにつながる可能性があるでしょう。
⑤所属意識を持てる
「私はここに所属している」と感じることもゲームの面白さに直結します。Supersonicの記事では以下の実例が紹介されています。
「Hide ‘N Seek」は敵を殺すことを目的としたゲームではありません。社交的になり、仲間と楽しむことが目的なのです。このように、プレイヤーが仲間に受け入れられている感覚を得たことで、「Hide ‘N Seek」のD1リテンション率は48%となり、アメリカのAndroidで1位を獲得しました。
引用:Supersonic
チームで力を合わせてプレイすると面白さが倍増した経験をお持ちの方は多いでしょう。ハイパーカジュアルゲームではマルチプレイができないことがほとんどですが、疑似的に他人と力を合わせている体験をユーザーにさせることで、結束感や達成感を味わわせることができます。
リテンション率UPに「面白さ」は必須
ハイパーカジュアルゲームのマネタイズには、リテンション率を高く保ち、LTVを上げることが大切です。そしてそんなリテンション率を上げるためには、ゲームを面白くすることが鍵となります。
今回紹介した面白さの5つの要素を念頭に置いて、データを分析してみてください。ユーザーが面白さを感じている部分とそうでない部分の違いが見えてくるかもしれません。
Supersonicの元記事はこちら
→あなたのハイパーカジュアルゲームは面白い?リテンション率を上げる最良の方法
投稿者プロフィール
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株式会社ソースコード広報部/ライター
海外のインディーズゲームが好きで、自分でも開発するようになるが、飽きっぽく凝り性なので一人でリリースまで作り上げることができず、ぐだぐだしているところをスカウトされた。
現在は主にディベロッパーへの技術サポートと公式サイトのお役立ち情報の更新を担当している。
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